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PAST EXHIBITIONS

Cerith Wyn Evans – Moments of life Selected Work from the Collection

February 2nd , 2023 – June 11th, 2023

Photo credits: © Cerith Wyn Evans

このたびエスパス ルイ・ヴィトン東京は、ウェールズ出身のアーティスト ケリス・ウィン・エヴァンスによる個展「L>espace)(」を開催いたします。フォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵コレクションを東京、ミュンヘン、ヴェネツィア、北京、ソウル、大阪のエスパス ルイ・ヴィトンにて展示する「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの一環として行うこの展覧会は、国際的なプロジェクトを実施し、より多くの方々に作品をご覧いただきたいというフォンダシオンの意向を実現するものです。

ケリス・ウィン・エヴァンスは、英国ロンドンのセント・マーチンズ・スクール・オブ・アートで美術学士を取得(1977-1980年)した後、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートのフィルム & テレビジョン専攻で修士号(1981-1984年)を取得。映画監督デレク・ジャーマンの助手を2年間務めた後、ダンサーとのコラボレーションや、ロックバンドとのビデオ制作などを通じて独自の実験映像の制作をはじめ、1988年には短編映画『ディグリーズ・オブ・ブラインドネス』を発表しました。90年代初頭には、彫刻またはインスタレーションに分類されるさまざまなメディアを用いた作品に移行しましたが、これらの映画的体験は実に強い印象を残しました。彼の作品は写真的イメージやテキスト(多くはネオンで示される)、光、音、ビデオなどを通じて、空間における形の顕在化について探求するものです。そして壮大なスケールでありながら、コンセプチュアルアートへの深い造詣により生まれる独特の距離感を持って存在しています。エヴァンスが作り上げるのは、意味の迷宮です。空間に形となって現れる引用や原典のあるテキストは、しばしば不可解な難問の様相を呈します。ポスト象徴主義や前衛の文学に垣間見られる遊びの要素や難解な側面が、インスピレーションの大きな源となっているのは明らかでしょう。

テキストとネオンを用いた作品は、自らの作品もその一部を成す「間テクスト性」を脱構築しようとする試みを上手く表現しています。例えば、ラテン語の回文を用いた作品では、シャンデリアのように吊るされたネオンの文字が丸く円を作り、支持体となっているガラスに反射して幾重にも重なり合います。エヴァンスは翻訳の問題についても取組んでいます。コンピュータに接続されている光が、その画面に流れていくウィリアム・ブレイクの詩や、フェミニスト理論家のジュディス・バトラー、神学者のミシェル・ド・セルトー、あるいはマルキ・ド・サドからの引用文をモールス信号の点滅で伝えるのです。光を用いて不明瞭なステートメントを伝えるという手法に象徴されるような矛盾を顕在化させるのがこの作家の特徴です。彼の見方では、詩は「実験のエキゾチシズム」と呼ばれるものから生まれ、その多義性の重なりの中で、事実とフィクション、現実とその分身、打ち立てられた確信と矛盾した感情などの間にある曖昧な領域を探求することができるのです。

初期には光を用いた作品で知られたエヴァンスですが、その後、動きやテキスト、音を自在に置き換えたり、可視性の限界を探ったりと、他に類を見ない彫刻作品を展開しています。フォンダシオン ルイ・ヴィトンがオープンする前の2007年に収集された今回のコレクションは、この点においても注目に値するものです。

フォンダシオン ルイ・ヴィトンについて
フォンダシオン ルイ・ヴィトンは現代アートとアーティスト、そしてそれらのインスピレーションの源となった重要な20世紀の作品に特化した芸術機関です。公益を担うフォンダシオンが所蔵するコレクションと主催する展覧会を通じ、幅広い多くの人々に興味を持っていただくことを目指しています。カナダ系アメリカ人の建築家フランク・ゲーリーが手掛けたこの壮大な建物は、既に21世紀を代表する建築物と捉えられており、芸術の発展に目を向けたフォンダシオンの独創的な取組みを体現しています。2014年10月の開館以来、900万人を超える来館者をフランス、そして世界各地から迎えてきました。
フォンダシオン ルイ・ヴィトンは、本機関にて実施される企画のみならず、他の財団や美術館を含む、民間および公共の施設や機関との連携においても、国際的な取組みを積極的に展開してきました。とりわけモスクワのプーシキン美術館とサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館(2016年の「Icons of Modern Art: The Shchukin Collection」展、2021年の「The Morozov Collection」展)やニューヨーク近代美術館(「Being Modern: MoMA in Paris」展)、ロンドンのコートールド美術研究所(「The Courtauld Collection. A Vision for Impressionism」展)などが挙げられます。また、フォンダシオンは、東京、ミュンヘン、ヴェネツィア、北京、ソウル、大阪に設けられたエスパス ルイ・ヴィトンにて開催される所蔵コレクションの展示を目的とした「Hors-les-murs( 壁を越えて)」プログラムのアーティスティック・ディレクションを担っています。これらのスペースで開催される展覧会は無料で公開され、関連するさまざまな文化的コミュニケーションを通じてその活動をご紹介しています。

ARTIST

Photo credits: ©Ali Janka

ケリス・ウィン・エヴァンス

ケリス・ウィン・エヴァンスは1958年、英国ウェールズのラネリーで生まれました。現在はロンドンとノーフォークを拠点に活動しています。ロンドンのセント・マーチンズ・アート・スクールとロイヤル・カレッジ・オブ・アートで学んだ後、短編の実験映像作家として活動を開始し、90年代にビジュアルおよびコンセプチュアル・アート作品の創作に移行しました。多彩な表情を持つ作品にはネオン管、音、写真、ガラスなどさまざまな素材が使われており、没入的な空間の中で鑑賞者の知覚や現実の概念を揺さぶります。
ケリス・ウィン・エヴァンスは、これまで数多くの名高い施設で個展を開催してきました。米国コロラド州のアスペン美術館(2021年)、イタリア、ミラノのピレリ・ハンガービコッカ(2019年)、英国ロンドンのウェールズ国立博物館およびテート・ブリテン(2018年)、メキシコ・シティのタマヨ美術館(2018年)、スイス、チューリッヒのハウス・コンストルクティヴ美術館(2017年)、イタリア、ボルツァーノのムゼイオン近現代美術館(2015年)、ロンドンのサーペンタイン・サックラー・ギャラリー(2014年)、スペイン、レオンのカスティーリャ・イ・レオン現代美術館(MUSAC) (2008年)、ロンドンのインスティテュート・オブ・コンテンポラリー・アート(2004年)、米国のマサチューセッツ工科大学およびボストン美術館(2004年)、フランスのパリ市近代美術館およびポンピドゥー・センター(2004年)など。また、ドイツ、カッセルのドクメンタ11(2002年)に参加したほか、2003年のヴェネツィア・ビエンナーレでは、ウェールズを代表する最初のアーティストとなりました。作品は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、テート・モダン、ポンピドゥー・センター、フォンダシオン ルイ・ヴィトン、パリ市近代美術館に所蔵されています。

ARTWORK

《…in which something happens all over again for the very first time》
2006年

ネオン
14 x 395 cm

© Cerith Wyn Evans
Photo credits: Courtesy of the artist and White Cube, London

《Sentiment》
2010年

ネオン
12.5 x 399.5 cm

© Cerith Wyn Evans
Photo credits: Courtesy of the artist and White Cube, London

《"Lettre à Hermann Scherchen" from 'Gravesaner Blätter 6'
from Iannis Xenakis to Hermann Scherchen (1956)》
2006年

シャンデリア、薄型モニター、モールス信号、コンピュータ
サイズ可変 (シャンデリア : 130 x 100 x 100 cm)

© Cerith Wyn Evans
Photo credits: Courtesy of the artist and White Cube, London

《A=F=L=O=A=T》
2014年

フォンダシオン ルイ・ヴィトンでの展示風景(2014年)

20本のガラス製フルート 、音
サイズ可変

© Cerith Wyn Evans
Photo credits: © Fondation Louis Vuitton / Marc Domage

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