Jeff Koons, Monkey Train (Birds) (2007).
© Jeff Koons. Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris.
エスパス ルイ・ヴィトン20周年及びフォンダシオン ルイ・ヴィトンの「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラム10周年に際し、エスパス ルイ・ヴィトン大阪は、アメリカ人アーティスト、ジェフ・クーンズの個展を開催いたします。本展は、1980年代の初期を代表するシリーズからそれよりも後期の大規模な絵画作品にいたるまで、その創作の変遷を紹介するものです。東京、ミュンヘン、ヴェネツィア、北京、ソウル、大阪のエスパス ルイ・ヴィトンでコレクションの作品を紹介する「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの一環として企画された本展は、国際的なプロジェクトを展開し、世界中のより多くの人々に作品を届けるというフォンダシオン・ルイ・ヴィトンの使命を体現しています。
1980年代以降、現代アートの世界において唯一無二の地位を築いてきたジェフ・クーンズ。家庭用品、広告に使われる表現、子供向けの図像、そして美術史からの引用を融合させた彼の作品は、芸術的に些末とされてきたものの価値を大きく変え、ハイカルチャーと大衆文化の間に潜む緊張関係を探求し続けてきました。本展「Paintings and Banality」では、社会が「凡庸」とみなすものをあえて取上げ、日常のオブジェやイメージが持つ象徴的な意味や、感情に訴えかける重みを明らかにしてきたクーンズの、40年以上にわたる実践を紐解きます。彼のキャリアを象徴するシリーズから厳選した作品は、鑑賞者に向ける鏡となり、個人的・集合的なアイデンティティを映し出しながら、美や喜びといった普遍的な概念について問いかけることでしょう。
クーンズが頭角を現したのは1980年代半ばのことです。当時、彼は掃除機やカーペットクリーナー、あるいは本展にも出品されている《Three Ball 50/50 Tank》(1985年)のバスケットボールなど、工業製品や大量生産された消費財をガラスやプレキシガラスのケースに収めて提示しました。彼は、「アメリカン・ドリーム」の象徴でもあるそれらの品々を、正真正銘の芸術作品へと昇華させたのです。その数年後、クーンズはこの手法をさらに発展させ、自ら「ありふれたオブジェ」を制作しはじめます。本展で紹介する《Woman in Tub》や《Wild Boy and Puppy》を含む1988年の「Banality」シリーズにおいて、彼はカートゥーンからの引用、ポップなイメージ、そして自身の記憶を融合させ、芸術、産業、大衆文化の境界を曖昧にする卓越した技巧の彫刻作品を生み出したのです。
絵画作品において、クーンズはコラージュの概念をさらに推し進めました。《Bracelet》(1995-1998年)などの初期作から、本展に出品される「Hulk Elvis」シリーズの《Landscape (Tree) II》や《Monkey Train (Birds)》(共に2007年)といった近作にいたるまで、クーンズは大規模なスケールのキャンバスの上で異質な視覚要素を重ね合わせています。これらの密度の高い構成は、現代社会がいかにイメージや記号で飽和しているかを物語っています。
誰もが即座にそれと分かるモチーフを引用することで、鑑賞者の関与を促すクーンズの作品。中でも観る者をいっそう強く惹き付けるのが、彼の手法の特徴でもある「反射する表面」です。例えば《Little Girl》(1988年)の鏡に鑑賞者自らの姿が映り込む時、鑑賞者は作品の成立に不可欠な存在となります。鏡、輝く表面、そして巧みなトロンプ・ルイユ(騙し絵)は、知覚、記憶、欲望が交錯する体験を生み出すのです。
フォンダシオン ルイ・ヴィトンについて
フォンダシオン ルイ・ヴィトンは現代アートとアーティスト、そしてそれらのインスピレーションの源となった重要な20世紀の作品に特化した芸術機関です。コレクションとフォンダシオンが企画する展覧会を通じ、公益を担いながら幅広い多くの人々に興味を持っていただくことを目指しています。カナダ系アメリカ人の建築家フランク・ゲーリーが手掛けたこの壮大な建物は、既に21世紀を代表する建築物と捉えられており、芸術の発展に目を向けたフォンダシオンの独創的な取組みを体現しています。2014年10月の開館以来、1100万人を超える来館者をフランス、そして世界各地から迎えてきました。
フォンダシオン ルイ・ヴィトンは、主催企画のみならず、公共機関や民間施設との連携においても、国際的な取組みを積極的に展開してきました。主な提携先には、モスクワのプーシキン美術館とサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館(2016年の「近代美術のアイコン シチューキン・コレクション」展、2021年の「モロゾフ・コレクション」展)やニューヨーク近代美術館(「Being Modern: MoMA in Paris」展)、ロンドンのコートールド美術研究所(「コートールド・ギャラリーコレクション 印象派への視点」展)、サンフランシスコ近代美術館やボルチモア美術館(「ジョアン・ミッチェル」回顧展)などが挙げられます。また、フォンダシオンは、東京、ミュンヘン、ヴェネツィア、北京、ソウル、大阪のエスパス ルイ・ヴィトンにて、コレクションの作品を展示する独自の「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムを展開しており、これらの展覧会はどなたでも無料でご覧いただけます。