
PAST EXHIBITIONS

エスパス ルイ・ヴィトン東京は、第13回目となるエキシビションに世界的に著名なベルギー人現代アーティスト、ヤン・ファーブルを迎えます。 『Tribute to Hieronymus Bosch (2011-2013)』と題した本展は、2013年のリール(フランス)の宮殿美術館、キエフ(ウクライナ)のピンチュック・アートセンターで行われたシリーズの新たな展開として、彼の代表作とも言える玉虫の鞘翅(さやばね)を扱った一連のモザイク画が、日本で初めて展示されるエキシビションとなります。
革新的なビジュアルアーティストであり、また劇作家・演出家として35年以上にわたり主要な地位を築いているヤン・ファーブルが手がける本展は、同氏の母国であるベルギーが、19世紀にコンゴに対し行った苛烈な植民地政策の歴史を題材にしています。奴隷制度や金などの略奪行為、また賭博など、ベルギーの文明化が進む一方で搾取され続ける植民地コンゴ―同氏は、そこに隠された「闇」を、初期フランドル派の巨匠、ヒエロニムス・ボスが描いた『地上の悦楽の園』に含まれる寓話や教訓の表象に置き換え、また同氏のアーティスト活動の象徴とも言える、昆虫のスカラベ(ブラジルタマムシ)を素材に用いて表現しました。スカラベが持つ緑色の艶やかな羽根が、ガラスに囲まれたエスパス ルイ・ヴィトン東京に差し込む光を反射し、同スペースをさまざまな色彩と深い闇が潜む空間へと変貌させます。
シリーズの新たな展開として、モザイク画5点と三連画1点、本年制作された彫刻作品8点の計14点の作品が展示されます。スカラベの持つ豪奢な輝きと、一方で生物の一部であった儚さ、そしてヒエロニムス・ボスの『地上の悦楽の園』からモチーフを取り入れた作品群が放つ、美しくも儚い、闇を携えたアイロニカルな世界観をぜひお楽しみください。
本エキシビションの実現に際し、エスパス ルイ・ヴィトン東京へ光と闇を与え、新たな空間の誕生へと導いたアーティストのヤン・ファーブルそして、多大なるご支援をいただいたアーティストのスタジオ、アンジェロス(ANGELOS)、アーティストのギャラリー ギャラリー・タンプロン(パリ、フランス)に心より感謝いたします。

© Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton
ヤン・ファーブル
ヤン・ファーブル(1958年アントワープ、ベルギー生まれ)は、革新的なヴィジュアルアーティスト、劇作家・演出家として、また作家として35年以上もの間、主要な地位を築いてきた。彼の多様で革新的な作品は、世界的に高い評価を得ている。1970年代後半にアントワープ王立美術アカデミーとアントワープ市立美術工芸研究所に学ぶ。1990年に発表した『チボリ城』、ブリュッセルにあるベルギー王宮の鏡の間の天井を玉虫の鞘翅(さやばね)で覆った 『Heaven of Delight(ヘヴン・オブ・ディライト)』 (2002)や、『The man who measures the clouds(雲を測る男)』 (1998)、 『Searching for Utopia(理想郷を探して)』 (2003)、 『Totem(トーテム) 』(2000-2004)といった野外彫刻により、広くその名を世間に知らしめる。2007年にはパリの狩猟自然博物館(フランス)を飾る『The Night of Diana (ディアナの夜)』 を、2012年にはアントワープ動物園の展示用として『A tribute to Mieke, the tortoise(カメのミカを讃えて)』と『A tribute to Janneke, the tortoise(カメのヤネケを讃えて)』を制作。また、王立美術館(ブリュッセル)の階段室に常設展示されているワックスとブロンズを素材に自身を題材に制作した彫像(『Chapters I - XVIII』 [2010])の隣に、2011年から13年にかけて制作したインスタレーション『The Gaze Within (The Hour Blue)、内なる視線(青の時間)』が展示された。
ヤン・ファーブルのドローイング・彫刻・オブジェ・インスタレーション・映画・パフォーマンス・思考モデルといったヴィジュアルアート作品は、その1つ1つが肉体のか弱さ、そして「それをどう守るかという想い、そしてまた人間観察やその人間がこの先どう生き抜いてゆくかという問いを暗示している。彼が肉体や科学に魅力を抱くようになったのは青年時代に遡る。昆虫学者ジャン=アンリ・ファーブル(1823-1915)が行った研究に影響を受け、昆虫をはじめとする生き物の世界を探り、時には昆虫の小さな体を解剖するだけでなく、それを新しい生き物に創り変えたりもしていた。
「変態(metamorphosis)」は、ヤン・ファーブルの芸術活動における主要なコンセプトの1つである。彼の作品では人間と動物が共存し、常に相互作用している。やがて彼は、官能的な身体やスピリチュアルな身体を描写したり、成長しやがて朽ちるという自然のサイクルに抗する不死の肉体を多様な形で創作したりするようになる。アーティストとしての彼の作業は、「美」という旗の下での詩的な抵抗行為なのである。これはまた、いずれこの世から消えてしまう日に備えての「訓練」のようなものであり、死への備えとしての命の賛美である。彼は長年の間、自分自身の法と規則により、また繰り返し登場する人物やシンボル、モチーフなどを使って、独自の世界を具現化してきた。
個展は『Homo Faber』 (アントワープ王立美術館、 2006)、『Hortus / Corpus』(クレラー・ミュラー美術館[オッテルロー、オランダ]、2011) や 『Stigmata. Actions and Performances 1976- 2013』 (MAXXI[ローマ、イタリア]、2013、アントワープ近代美術館、 2015)など。ルーブル美術館(パリ)に作品(『L’Ange de la metamorphose(変貌の天使)』[2008])を展示した存命のアーティストは、彼が初めてである。有名な『The Hour Blue(青の時間)』 シリーズ(1977-1992)の展覧会が、2011年にウィーンの美術史美術館(オーストリア)で、2012年にサン=テティエンヌの近代美術館(フランス)で、そして2013年に釜山市立美術館(韓国)で開催された。彼の研究テーマである「体の中で最もセクシーな部分」である「脳」をモチーフとした『Anthropology of a planet(ある惑星の文化人類学)』 の個展が2007年ヴェネツィアのパラッツォ・ベンゾン (Palazzo Benzon) で開催。また 『From the Cellar to the Attic. From the Feet to the Brain (地下室から屋根裏まで。足から脳まで)』 が、2008年ブレゲンツ美術館(オーストリア)、2009年アルセナーレ・ノヴィッシモ(ヴェネツィア、イタリア)で、そして 『PIETAS』 が、2011年ヌオヴァ・スクオーラ・グランデ・ディ・サンタ・マリア・デッラ・ミゼリコルディア、ヴェネツィア)、2012年 Parloods Park Spoor Noord(アントワープ)で公開された。
近年の一連のモザイク画『Tribute to Hieronymus Bosch in Congo (2011-2013)(ヒエロニムス・ボスとコンゴ―ボスを讃えて)』 と 『Tribute to Belgian Congo (2010 - 2013)(ベルギー領コンゴへの賛辞)』 の展示会も、既に2013年にリール(フランス)の宮殿美術館とキエフ(ウクライナ)のピンチュック・アートセンターで開催されている。これらの作品は、2016年、ヒエロニムス・ボス没後500年祝祭行事の一環としてデン・ボス(オランダ)にて展示されることになっている。
ヤン・ファーブルは同じく2016年、サンクトペテルブルク(ロシア)のエルミタージュ美術館とモナコの海洋博物館の両方で開催される大規模な展覧会に、正式に招待されている。

THE CIVILIZING COUNTRY OF BELGIUM (2012)
(文明をもたらす国、ベルギー)
シリーズ『ヒエロニムス・ボスとコンゴ―ボスを讃えて(2011-2013)』より
木に玉虫の鞘翅
227.5 x 173 x 8.1 cm
Photo: Pat verbruggen
© Angelos bvba

GAMBLE WITH DEATH (2011)
(死をともなうギャンブル)
シリーズ『ヒエロニムス・ボスとコンゴ―ボスを讃えて(2011-2013)』より
木に玉虫の鞘翅
227.5 x 173 x 8.1 cm
Photo: Pat verbruggen
© Angelos bvba

THE POT CALLS THE KETTLE BLACK (2012)
(鍋がやかんを黒いと言う)
シリーズ『ヒエロニムス・ボスとコンゴ―ボスを讃えて(2011-2013)』より
木に玉虫の鞘翅
227.5 x 173 x 8.1 cm
Photo: Pat verbruggen
© Angelos bvba

THE SHROUD OF THE BELGIAN CONGO (2013)
(ベルギー領コンゴの経帷子)
シリーズ『ヒエロニムス・ボスとコンゴ―ボスを讃えて(2011-2013)』より
木に玉虫の鞘翅
227.5 x 173 x 8.1 cm
Photo: Lieven Herreman
© Angelos bvba

THE ART OF THE COLONIES (2013)
(植民地の芸術)
シリーズ『ヒエロニムス・ボスとコンゴ―ボスを讃えて(2011-2013)』より
木に玉虫の鞘翅
227.5 x 173 x 8.1 cm
Photo: Lieven Herreman
© Angelos bvba

(tryptich)
VENTURING ON SLIPPERY IRON (2013)
シリーズ『ヒエロニムス・ボスとコンゴ―ボスを讃えて(2011-2013)』より
木に玉虫の鞘翅
227.5 x 173 x 8.1 cm (3枚組)
Photo: Lieven Herreman
© Angelos bvba

SKULL WITH POKER HAND (2013)
(髑髏とポーカーハンド)
玉虫の鞘翅、ポリマー、厚紙
22 x 19 x 28 cm
Photo: Lieven Herreman
© Angelos bvba

SKULL WITH THE TOOL OF POWER (2013)
(髑髏と権力の道具)
玉虫の鞘翅、ポリマー、銀
42 x 16 x 21 cm
Photo: Lieven Herreman
© Angelos bvba
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SKULL WITH MACHETE I (2013)
(髑髏とマチェットI)
玉虫の鞘翅、ポリマー、鉄、木
24 x 40 x 55 cm
Photo: Lieven Herreman
© Angelos bvba

SKULL WITH ICE SKATE (2013)
(髑髏とアイススケート)
玉虫の鞘翅、ポリマー、鉄、木、布
27 x 23 x 21 cm
Photo: Lieven Herreman
© Angelos bvba

THE PECKER AT THE SAP OF LIFE (2015)
(命の樹液を吸うキツツキ)
玉虫の鞘翅、ポリマー、鳥の剥製
100 x 18 x 23 cm
Photo: Lieven Herreman
© Angelos bvba

DIVINE FERTILITY (2015)
(神から授かる豊穣多産)
玉虫の鞘翅、ポリマー、鳥の剥製
126 x 37 x 67 cm
Photo: Lieven Herreman
© Angelos bvba

THE PLUNDERING HERALD OF LIFE AND DEATH (2013)
(生と死の略奪の使者)
玉虫の鞘翅、ポリマー、鳥の剥製
37 x 20 x 45 cm
Photo: Lieven Herreman
© Angelos bvba










