



Claude Germain/Primae.
©ADAGP, Paris 2017
エスパス ルイ・ヴィトン東京では、ミニマリズムの主唱者の一人として、媒体としての「光」を探求し蛍光灯を用いた作品で知られる、アメリカ人アーティスト、ダン・フレイヴィンに敬意を表し、『DAN FLAVIN』展を開催いたします。ピエール・ユイグの個展に引き続き、本展覧会はパリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンが所蔵するコレクションの中から未公開の作品を世界中のエスパス(東京、ミュンヘン、ヴェネツィア、北京)にて紹介し、芸術的活動を展開する「Hors-Les-Murs(壁を越えて)」プロジェクトの一環として企画されました。
ダン・フレイヴィンは1961年から1963年にかけて制作した『Icons (イコン)』シリーズで初めて「光」を使用しました。8枚の四角いキャンバスに電球と蛍光灯を取り付けたこの一連の作品は、その後芸術家としての彼のキャリアにおける”閃き”の瞬間に繋がり、45度の角度で壁に取り付けられたゴールドの着色蛍光管が発する長い1本の光の帯──『The Diagonal of May 25, 1963(1963年5月25日の斜め線)』が誕生しました。彼はそれ以降、4種類のサイズと10種類の色(青・緑・ピンク・黄・赤・紫外線、そして4種類の白)の既製品の蛍光灯のみを素材として、これらを改造したり、あるいは装飾を加えたりすることは一切せずに限られた材料を様々に配置した作品を生み出し続けました。
フレイヴィンの作品は、素材である「光」を宗教的、あるいは神秘的に解釈することを一切退けます。光は単に、それ自体の存在を表すものとしてのみ用いられているのです。つまりそれは、本質的に「状況的(situational)」なものであり、作品に占有された物理的空間、そして鑑賞者とその空間に生まれる相互作用に焦点が当てられているのです。1960年代から1970年代にかけて、フレイヴィンの作品は、単純な構造から、部屋の角部分を使ったインスタレーション、そして代表的な「格子で塞がれた廊下(barred corridors)」まで、より複雑な形状を持つようになりました。やがてその規模は空間の隅々に至るまで拡大し、床から天井まで、あるいは壁に沿って伸び、ピクチャーレール、廊下にまで広がりました。同時にフレイヴィンは、様々な色のバリエーションや明度を試し、垂直方向、水平方向、あるいは斜め方向に配した蛍光灯の長さや本数、並べ方に応じて、色合いや明るさを調節しました。
1970年代以降、フレイヴィンの作品の構成はますます大規模になっていき、この頃から彼は、主として、特定の場所に存在するために制作するサイトスペシフィック・インスタレーションに取り組むようになりました。芸術家としてのキャリアを通してフレイヴィンが最も意欲を見せたこと──それは、単純な光の相互作用を用いて空間を変身させ、美しく豊かなものにすることにより、鑑賞者に感覚的な空間の体験を提供するということでした。
エスパス ルイ・ヴィトン東京では、フレイヴィンの先駆的な作品の制作活動に敬意を表し、フォンダシオン ルイ・ヴィトンのコレクションの中から、次の7つの作品をご紹介します:
『Untitled (無題)』(1963年)、『Alternate Diagonals of March 2 (to Don Judd) [3月2日のもう1つの「斜め線」(ドン・ジャッドへ)]』(1964年)、『“Monument” for V. Tatlin (V・タトリンのための“モニュメント”)』(1964-65年)、『“Monument” for V. Tatlin (V・タトリンのための“モニュメント”)』(1967年)、『“Monument” for V. Tatlin (V・タトリンのための“モニュメント”)』(1969年)、『“Monument” for V. Tatlin (V・タトリンのための“モニュメント”)』(1970年)、『Untitled (to Alex and Nikki) [無題(アレックスとニッキーへ)]』(1987年)。
フォンダシオン ルイ・ヴィトンについて
フォンダシオン ルイ・ヴィトンは、現代アートとアーティストに特化し、同様にそれらのインスピレーションを辿ることができる 20 世紀の作品を紹介する芸術機関です。フォンダシオンが所蔵するコレクションと主催する展覧会を通じ、幅広く多くの人々に興味を持っていただくことを目指しています。建築家フランク・ゲーリーが手掛けたこの建物は、フォンダシオンのその独創的で将来の発展に目を向けた芸術への取り組みを体現し、既に21世紀を象徴する建築物として認められています。2014年10月の開館以来、毎年100万人を超える来館者をフランス、そして世界各地から迎えています。
パリで活動を開始して以来、フォンダシオン ルイ・ヴィトンは、フォンダシオンにて実施される企画のみならず、他の財団や博物館を含む、民間および公共の施設や機関との連携においても、国際的な取り組みを積極的に展開していくことを掲げてきました。また、フォンダシオンは所蔵するコレクションの展示を目的にミュンヘン、ヴェネツィア、北京、東京に設けられた文化スペースにて開催される、『Hors-les-murs (壁を越えて)』プロジェクトのアーティスティック・ディレクションを担っています。これらのスペースで開催される展覧会は無料で公開され、様々なプログラムが特定の文化的コミュニケーションを通じて実施されています。
ダン・フレイヴィン
ダン・フレイヴィン(1933-1996年)は、ミニマリスト運動の主唱者として芸術媒体に「光」を使用するという手法の探究に生涯を捧げました。父親の方針により受けざるを得なかった宗教的教育を自ら断ち切ったフレイヴィンは、ニューヨークのコロンビア大学において美術史を学び、様々な芸術的技法や材料についての知識も身に付けました。工業的に加工された材料の使用、基本形の連続と反復という手法、そして表象、錯覚、あるいは隠喩(メタファー)の拒絶を通して、フレイヴィンは、ドナルド・ジャッド、ロバート・モリス、ソル・ルウィットなどと並び、ミニマリスト運動の誕生に貢献しました。

『Untitled (無題)』 (1963年)
緑色の直管蛍光灯
244 x 10 x 7 cm
Courtesy Fondation Louis Vuitton
Photo credit: © Adagp, Paris 2017

『Alternate Diagonals of March 2, 1964 (to Don Judd)[3月2日のもう1つの「斜め線」(ドン・ジャッドへ)]』 (1964年)
直管蛍光灯(昼光色)
長さ 369.6cm
Courtesy Fondation Louis Vuitton
Photo credit: © Adagp, Paris 2017

『“Monument” for V. Tatlin (V・タトリンのための“モニュメント”)』(1964-1965年)
8本の白色直管蛍光灯
244 x 80 x 12 cm
Courtesy Fondation Louis Vuitton
Photo credit: © Adagp, Paris 2017

『“Monument” for V. Tatlin (V・タトリンのための“モニュメント”)』(1967年)
7本の白色直管蛍光灯
244 x 72 x 7 cm
Courtesy Fondation Louis Vuitton
Photo credit: © Adagp, Paris 2017

『“Monument” for V. Tatlin (V・タトリンのための“モニュメント”)』(1969年)
8本の白色直管蛍光灯
244 x 82 x 7 cm
Courtesy Fondation Louis Vuitton
Photo credit: © Adagp, Paris 2017


























